「伝説の営業マン」に学べ…青学を箱根駅伝V3に導いた原晋監督の人心掌握術 (2/4ページ)

 陸上選手としての道が途絶えたら、次に考えるのが指導者の道。慣れ親しんだ環境で仕事を見つけるのが、多くのスポーツ選手のセカンドキャリアとなりますが、原監督はそれを選びませんでした。

 中国電力の提案型営業マンとして再スタートをきった原監督。同期が本社で活躍するなか、配属されたのは支店の下にある山口県徳山市(現・周南市)の営業所。この職場で、蓄熱式空調システム「エコアイス」を社内でいちばん売り上げました。社内でも目立つ存在になり、「伝説の営業マン」と呼ばれるように。

 中国電力で10年ほどサラリーマン生活を送った後、とくにコーチングなどの指導メソッドを学ぶこともなく青学の監督に就任した原氏。いま、青学で展開している「組織構築術」「人材育成術」は、営業マン時代に培ったものが土台なのです。これらを武器に、箱根駅伝から遠ざかっていた同大学を大きく飛躍させました。

 原監督が見極める「可能性ある選手」とは

 選手を見極める立場にある監督。原氏は、その際に感性や表情が豊かであるかどうかを注視していると言います。ただ走るスピードが速い選手よりも、人として豊かであり、強さを持つ選手に可能性を感じているのです。タイムという数値で序列をつけるのは簡単です。しかし原監督は、あえて数値以外のところに目をつけ、選手の素質を見極めようとしています。

 「ただ黙っておとなしく言うことを聞いている子じゃなくて、コミュニケーションが出来る子がいい選手になる。陸上はどうしても個人プレーになりがちなんだけど、いま、あえて全体ミーティングで、“それじゃだめだ”ということを言っています。世の中に出たら、ただ自分だけが走ればいいわけじゃないんだからなって。だから陸上選手は会社の中で出世しないんだよってね」

 原監督のそうした考え方が、自著『人を育て組織を鍛え成功を呼び込む勝利への哲学』で紹介されています。

ビジネスの成功者が見せるべき器の大きさ