【江藤詩文の世界鉄道旅】バレーメトロ(1)和気あいあいの車内で何が!? 突然起こった流血の大騒動 (2/2ページ)

2017.1.22 18:00

ライトレール「バレーメトロ」
ライトレール「バレーメトロ」【拡大】

  • クレジットカードも使える自動券売機
  • ラッピング車両もある
  • 駅にはモダンアートがあった
  • 案内板の表示もわかりやすい

 「バレーメトロ」は2両編成で、乗り込んだ車両の座席は8割ほど埋まっていた。小さな子どもと若いお母さん、全員が大きなシェイクを抱えた太ったファミリー、穏やかにスナック菓子を分け合う老夫婦。ひと際目立っていたのはクリス・タッカーみたいに高い声で早口に喋りまくる黒人男性だ。楽器を持った白人男性グループが、音楽を奏でながら黒人男性と談笑している。う~ん、アメリカらしい自由な光景だ。だだっ広い風景が続く車窓を眺めていると、突然車内が色めきたった。何か口論になったようで、黒人男性が降車がてらに白人男性の顔を殴ったのだ。床には血が飛び散っている。興奮した人々が大声の早口で口ぐちに何かを言い合うが、こうなると私の英語力では正確に聞き分けられない。白人男性がジャケットの下に手を入れると、小さな悲鳴が響いた。彼が出したのはブルーのハンカチだったのだけれど、私は女の子を連れた若いお母さんに小突かれるようにして、慌ててメトロを降りた。

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら

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