珈琲でも飲んでのんびりすごせる時間に、わざわざ副作用のあるようなことをしているわけですから。人を故意に攻撃する人は、その言葉が相手を傷つけるということをわかったうえでやっている。つまり、自分もその言葉で傷ついたことがある人だと思います。そういう経験がないと、相手を傷つけようと思ったときにわざわざその言葉を選ばないでしょう。
子どものころ、やたらと人の身長のことを口にする同級生がいたのですが、彼自身、背が低かったんですよね。だから彼の攻撃は「それを言われたくない」ということの裏返しだったのだと思います。自分と違う意見を持っている人に対して「頭が悪い」としか言えない人は、自分もそう言われるのがなにより嫌なのでしょう。心無い言葉を耳にすると、殺伐とした気持ちになったりもしますが、それはその言葉を使う人自身の苦しさや悲しみのあらわれなんだというふうに考えてみると、感じ方が変わるかもしれません。
為末 大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。http://tamesue.jp
(答える人=為末大 撮影=鈴木愛子)(PRESIDENT Online)