カナダ・オンタリオ州北東部、マスコーカ地方に位置するアルゴンキン州立公園。東京都の約3.5倍にも及ぶ面積を有する公園内は、針葉樹と広葉樹のパッチワーク模様が織りなす自然美を誇る。それに加えて2400以上の湖沼、1200キロにも及ぶ川が流れる。またトロントやオタワなどの大都市からのアクセスも良いことから、北米でも有数の自然公園として知られ、自然が好きなことで有名なカナダ人の聖地として愛される場所だ。
特に秋は、公園の多くを占めるメープルシロップの原料となるサトウカエデ、ブナに白樺、アスペンなどの広葉樹が色づく紅葉のメッカで、日本人旅行客にも人気のメープル街道の一端を担っている。また、地理的な条件から、北方の鳥と南方の鳥の生息域が重なる境界線上にあるため、多種の鳥が観察できることから、バードウォッチャーにとっての聖域ともなっている。
一見、手付かずの豊かな自然の森に見えるこの公園だが、100年余り前は、今の姿を想像することさえ難しいほど破壊されていたという。その原因が伐採と山火事だ。19世紀に入り材木業の会社が進出すると、公園内の木々を切り尽くして放置した。その後、オンタリオ州議会は天然資源の保護を目的に1893年、カナダで最初の州立公園に指定した。今では二次林として植えられたサトウカエデが主となり森を形成する。秋は真っ赤な絨毯が一面に敷き詰められたような風景、そして冬は一面の白銀の世界が広がっている。
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紅葉が終わりを告げる頃から雪が舞い、零下20度以下になる日々が春先まで続くアルゴンキン州立公園。冬はそれまでの賑わいが嘘のように静まり返る公園内だが、新たな楽しみのシーズンが幕を明ける。「ウィンタートレイル」である。アルゴンキン州立公園では、冬期でも解放しているトレイルが幾つかあり、鳥のさえずりを聞きながら、雪の上を歩くスノーシュー(かんじき)トレッキングが密かなブームだ。冬越しする鳥たちにも会うことができるうえ、夏場に比べて枝に葉のないこの時期は鳥を見つけやすいシーズンともなる。