麻酔科の奥富俊之診療教授は「体力の消耗を防ぎ、産後の回復も早い。医療上のメリットもある」と指摘する。出産で痛みを感じると、血管が収縮し、胎盤を介して赤ちゃんへ送られる血流が少なくなる。だが、無痛分娩なら、痛みによる血流の変化を抑えることができ、赤ちゃんへの酸素を安定して供給できる。高血圧や精神疾患など持病のある人は、脳出血やパニック発作などのリスクを抑えることが可能だ。高齢妊婦の場合、体力の温存ができる。
妊婦からは「赤ちゃんへの影響」と「痛みが本当に取れるのか」という質問が多いが、奥富医師は「麻酔薬は妊婦の血液中にわずかに入るだけで、赤ちゃんへの影響はまず、ありません」と話す。妊婦の希望に合わせて麻酔量を調整するが、硬膜外鎮痛法は効果が出るまで15分程度のため、痛みを感じても一時的で済む。