がん細胞を狙い撃ちして退治する分子標的治療薬が化学療法の大きなウエートを占めるようになってきた。ところが、顔面にニキビのような皮疹が出たり、手足にやけどのような水泡ができ、痛みが走ったりするなどの皮膚障害の副作用が高率に出る。投与前からの計画的な治療や予防の対策が迫られている。(坂口至徳)
重症化すると
分子標的薬は、がん細胞が増殖したり、他の組織に入り込み転移したりする際に働く特有の分子を攻撃する。このため、正常細胞への影響は少なく、髪が抜けるなどこれまでの抗がん剤の副作用は少ないとされていた。しかし、がん細胞の表面に多く発現する特有の分子は正常な皮膚の細胞も少量持っているため、分子標的薬が作用し、症状を起こすとされる。
これまで確認された皮膚障害は、分子標的薬の種類によって異なる。
がん細胞同士の増殖の情報連絡を遮断するタイプの薬(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)では、ニキビのような「●瘡(ざそう)」という皮疹が皮膚一面に出る症状をはじめ、極端に皮膚が乾燥状態になり、指先やかかとの角質層がはがれ落ちるなどしてかゆみや痛みに悩まされる「乾燥性皮膚炎」、爪の周囲が赤く腫れ、重症化すると亀裂や痛み、出血で、歩行困難など生活に支障をきたす「爪囲(そうい)炎」がある。