認知症の診断の中で最も比率の高いアルツハイマー型認知症患者に対する治療薬は現在、4種類あり、患者の体質や生活環境に合わせ、選択できる。香川大学医学部付属病院で認知症治療に取り組む中村祐・医学部教授に聞いた。(日野稚子)
生活機能改善
「一般の方は認知症治療薬が、さほど効かないと考えているようだが、治療する立場から言えば、皆さんが思っている以上に効果がある」と中村教授は話す。
アルツハイマー型認知症を対象とした治療薬で最も古いのは、国内で平成11年に発売されたアリセプト(一般名・ドネペジル塩酸塩)。アルツハイマー病を発症すると、脳の神経伝達物質のアセチルコリンが減少する。アリセプトは、アセチルコリン分解酵素(コリンエステラーゼ)を阻害し、アセチルコリンの減少を食い止めるメカニズム(作用機序)。「これによって、注意力低下や意欲が改善され、生活機能が上がる。そうすると、周囲とのコミュニケーションも改善され、副次的には患者が抱いていた不安も解消され、落ち着いてくる」(中村教授)