■単身高齢者を支える事前調整
この日、花戸医師は72歳から95歳まで5人の患者宅を訪問した。小島そよさん(93)=仮名=は単身で、高齢化率が6割を超える奥永源寺地区に住む。「あの鉄塔の立っている山の向こうまで行きます」。車はダム沿いの道を上がっていく。冬は雪が50~60センチも積もり、訪問看護のサービスもない。「サービスが限られている分、あるもので工夫しようという気持ちはあります」(花戸医師)
そよさんは骨折後、歩行範囲が狭まった。訪問診療は月1回だが、この日は38度超の発熱で往診依頼があった。
診察後、花戸医師はいつものように聞いた。「病院へ行く? その方が安心やったら入院してもいいし、家におるんやったら、電話をくれたら僕はすぐ来るよ」。治療法は家でも病院でも変わらないとの判断だが、独居の不安を思いやった。半面、高齢者は入院で身体や認知の機能が急に落ちる危険性もある。