「サンマ消える日も近い…」あり得ないほど高騰 背景に「台湾漁船」の影

 
高騰している生サンマの売り場=9日午後、大阪市平野区(村本聡撮影)

 秋の味覚・サンマに異変が生じている。スーパーなどの販売価格が高騰しており、その背景に、日本列島を相次いで襲った台風の影響や近年の海水温上昇に加え、サンマブームに沸く台湾の“乱獲”があるという。「このままでは、食卓からサンマが消える日も近いかもしれない」。関係者は危惧(きぐ)している。(小泉一敏)

 今月開店を迎えたばかりの大阪市平野区のスーパー「アプロ平野店」。セール商品が並ぶ中、鮮魚コーナーのサンマは1匹298円の値段を付けていた。買い物に訪れていた同区の会社員、川北敬子さん(52)は「子供も好きだし、季節のものなのに、こんな値段では気軽に食べられない」とため息をついた。

 同店の鮮魚担当者によると、例年であれば、系列店に並ぶサンマは1匹150~200円程度。しかし今季は、入荷具合によるものの、400円で販売せざるを得ない日があるという。

 この季節の鮮魚の売り上げは例年、サンマが大半を占めるといい、担当者は「これではどうしようもない」と頭を抱える。

 なぜ、ここまで高騰しているのか。要因の一つには、相次ぐ台風の通過があるとされる。

 サンマ漁の大半は、北海道や東北を拠点にしている漁船が行っている。しかし今年は8月に計6つの台風が接近・上陸。「出漁できない状態が続き、需給バランスがあっておらず、価格高騰を招いている」(市場関係者)という。

 また、サンマは北からの寒流に乗って日本近海に集まるが、国立研究開発法人水産研究・教育機構の担当者は「今年は海水温が高い状態が続いており、日本近海に寄ってこず、あまり取れなくなっている」としている。

 こうした異変に加え、台湾漁船の動向がサンマの価格高騰につながっているという。

 台湾では、和食ブームでサンマが大人気となっており、サンマ漁も盛んに行われている。同機構などによると、北海道沖の日本の排他的経済水域(EEZ)のすぐ外側の公海上にはシーズンになると、台湾漁船が大挙して押し寄せている。

 漁が行われている海域は沿岸から遠く、漁獲しても日本人が好む鮮度を保てないため、日本漁船は出向かない。さらに、台湾漁船は1200トンと日本の6倍以上あり、船内に冷凍施設を備え、数カ月にわたって洋上にとどまって漁を続けることが可能だという。

 市場関係者は「日本近海に集まる前のサンマを根こそぎ取っているような状態だ」と訴える。

 同機構によると、日本の年間漁獲量は昭和55年ごろから20万~30万トンで推移し、シェアの80~90%を占めていたが、平成20年ごろから台湾が急増。25年には台湾が18万2千トンと日本(14万7千トン)を逆転。昨年の日本のシェアは32・2%まで落ちている。

 また、台湾は、サンマ消費だけではなく、中国などへの輸出にも力を入れているといい、関係者は「このまま押され続けると、日本の食卓からサンマが消える日も来るのではないか」と危ぶんでいる。