シニア世代に外食特典 値引きカードや飲み物無料、食べ放題も
シニア世代の利用者向けに特典を設ける飲食チェーン店が増えている。値引きを受けられるポイントカードを発行したり、無料で飲み物の提供を受けられたり。サービス内容はさまざまで、家計を節約しつつ、外食を楽しむきっかけとなっている。(櫛田寿宏)
子供や孫と一緒に
妻と月2、3回ほどファミリーレストラン(ファミレス)を利用するという埼玉県内の元小学校長の男性(69)は優遇サービスを利用している。「現役時代はクーポンやポイントカードを使う習慣がなかった。退職して年金生活となり、特典に目が向くようになりました」と笑う。
すかいらーくグループは、60歳以上のシニアを対象に、運営する「ジョナサン」「夢庵」「バーミヤン」などのファミレス全国約1100店で使える「プラチナポイントカード」を無料で発行。3カ月の期間中、1千円ごとの利用でスタンプ1個がもらえ、1~10個たまると3%、11~20個で5%、21個で8%の割引を受けられる。一緒に来店した人全員の料金が割引になる。
このサービスは約10年前から試験的に進められ、昨年から全国展開された。昨年だけで延べ約1千万件の利用があった。同社第2プロモーションチームリーダーの新倉保行さんは「同伴者も割引になるので、子供と孫の3世代で来店するケースも多い」と話す。
行列時に優先入店
ペッパーフードサービス(東京都墨田区)が運営する立ち食い形式のステーキ店「いきなり!ステーキ」も7月からシニア特典のサービスを開始した。
70歳以上を対象に「シニアカード」をつくり、提示すればアルコール類を含む飲み物1杯が無料に。「敬老の日」には1千円分のクーポンを贈られる。ユニークなのは、店に行列ができていてもカードを提示すると優先的に入店(同伴者は1人まで)できる点。この2カ月間あまりで約1千人に発行しているという。
平成25年の1号店出店以降、全国に急拡大し、現在約100店舗に上る。立ち食いが基本だが、落ち着いて食べられる店作りも進めており、同社営業企画本部の川野秀樹本部長は「高齢者の方も利用しやすい椅子席のある店も増やしている」と説明する。
食べ放題も割安
食べ放題でも特典を設けている店が多い。
レインズインターナショナル(横浜市西区)が全国に約600店を展開する焼き肉チェーン「牛角」は、65歳以上に食べ放題コースが500円引きになる「シルバー割」を設定。8月の1カ月間に延べ約3500人が利用したという。全国約400店ある「しゃぶしゃぶ温野菜」でも同じ内容の割引コースを設けている。
アールアンドケーフードサービス(東京都世田谷区)が東京と神奈川で運営するファミレス「シズラー」は旬の野菜を使ったサラダバーが充実しており、ヘルシー志向のシニアからの人気も高い。4月から60歳以上に「シニアカード」を発行。平日終日と土日祝日のランチタイムに提示すると、20%引きになる。
こうした特典が増える背景には、高齢化社会で飲食店がシニア世代の顧客を取り込もうという狙いがある。日本SPセンター・シニアマーケティング研究室の倉内直也室長は「夫婦や孫と連れだって食事に出かけるなどコミュニケーションのきっかけになるのでは」と話している。
■高齢者の5割が割引サービス重視
ファミレスを利用する高齢者の半数近くが割引サービスなどの特典を重視していることが、調査会社「ジャストリサーチサービス」の調査で分かった。
調査は平成25年8月に、東京都と神奈川、千葉、埼玉の各県の60~79歳の計447人を対象に実施。
それによると、ファミレスに求めること(複数回答)として、49.0%が「割引サービス」を重視していると回答した。「静かでくつろげる店内であること」(74.7%)や「自分の食べきれる量のメニューが充実していること」(65.8%)などの割合も高かった。
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