40代過ぎた“使い捨てコンタクトレンズ世代” 遠近両用など選択肢増える
近視と老眼の両方に一枚のレンズで対応できる「遠近両用コンタクトレンズ」の市場が伸びている。若い頃から使い捨てコンタクトレンズに慣れ親しんできた世代が40代を過ぎ、老眼を自覚する年代を迎えたことで遠近両用のニーズも広がってきたわけだ。メーカー各社は、コンタクトレンズ一枚の中に、近視に対応したレンズ部分と老眼に対応したレンズ部分を両方兼ね備え、眼球が近くを見る場合と遠くを見る場合のどちらにも適した商品を相次いで開発、販路を拡大させている。(阿部佐知子)
171種の選択肢
コンタクトレンズ最大手の米ジョンソン・エンド・ジョンソンの「ビジョンケアカンパニー」(東京)は今年1月、使い捨ての「ワンデーアキュビュー」シリーズから遠近両用の「モイストマルチフォーカル」(30枚入り)を発売した。
ものを見る際に重要な瞳孔の大きさが年齢で変わることに着目。異なる瞳孔径に合わせたレンズを取りそろえた。これに度数を組み合わせることで、171種の中から選択できるようにしている。
遠近両用の場合、近視と老眼の度数の進行具合や年齢により目の状態が異なったり、近くを見る作業が多い人や車の運転が多い人など、使い方の状態が異なったりするため、これまでは業界でも消費者に適したレンズの提供は難しいとされてきた。
同社では瞳孔径の研究を重ね、度数だけでなく瞳孔径も組み合わせて消費者に適したレンズを提供できるようにした。購入客に処方する医師への商品特性の説明も強化し、消費者の満足度を高めている。
担当者は「さまざまな目の状態に適応したレンズを自由に選べるようにした」と話す。
独自の設計
コンタクトレンズ市場は近年、使い捨てタイプが多数を占めている。
遠近両用を発売している大手シードでは、これまでに2週間交換型の「シード 2ウィークピュアマルチステージ」(6枚入り)や、1日使い捨て型の「シード ワンデーピュア マルチステージ」(32枚入り)などの商品を次々と発売してきた。
自然な見え方を追求し、レンズの中心に遠くを見る部分、その周囲に近くを見る部分を配置した独自の設計を実現し、使い勝手を大幅に向上させた。担当者は「初めての人にも使いやすい」としている。
一方、大手メニコンは、遠近両用のソフトコンタクトレンズの新製品「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」(6枚入り)を発売した。
老眼の進み具合で選択できるように、近くを見る部分の度数を複数そろえた。軽めの症状の人にも違和感なく使えるという。担当者は「働く女性などの利用者が増えている」と話す。
拡大する市場
コンタクトレンズは国内では平成3年に使い捨てが認可されたことを機に、一気に普及した。
それから25年が経過し、当時10、20代だった愛用者が40代にさしかかったことで、遠視の症状自覚とともに遠近両用のニーズが急増してきた。このコンタクトレンズ愛用者の高齢化に近眼の低年齢化も加わり、市場規模は拡大の一途をたどっている。
業界関係者は「遠近両用のコンタクトレンズは商品の開発競争が激しく、今後もさらに需要が増える」とみている。
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