座るか、立つか…尿が飛び散る小便問題 妻の「妊娠意欲」と相関関係?

提供:PRESIDENT Online

 立ち小便は、尿が約2300滴も飛び散る

 「モテる男は座りション!」「男子も座りションの時代」--これは、男性の座り小便を促すためのステッカーの文言。もっぱら妻が夫や子供、または来客に向けて呼びかけるものだ。Amazonを見れば、こうしたステッカーが10数種類も販売されており、需要の高さを窺わせる。

 言うまでもなく、男性の立ち小便は女性に評判がすこぶる悪い。

 「男女兼用のトイレはどこも床が汚くてとてもじゃないが入れない。女性専用のトイレがない飲食店には絶対行けません」(29歳・女性)

 という声もあるほどだ。昨年、「男性が立って小用を足す“立ちスタイル”では、1日で周囲に尿ハネが約2300滴も飛び散る」(調査元:ライオン)という衝撃的なデータが発表され、ますます男性の立ち小便派(※以下、「座り派」と表記。「立ち小便派」は「立ち派」)は肩身が狭くなっている。

 データを見ても、この10年で「立ち派」は大幅に減少している。

 パナソニックによる「家での男性の小便スタイルは?」によると、2004年から15年の10年間で、立ち派は2割も減り、立ち派と座り派の比率は7:3から5:5へと変化したという。座り派が約半数にものぼり、まさしく「男子も座りション」の時代となりつつあるのだ。

 未婚男性は「立ち派」、既婚男性は「座り派」

 SUUMOの調査でも立ち派と座り派は43%:55%と拮抗。座り派が若干上回っている。さらに興味深いのは、未婚の場合6:4で立ち派が多いのに対し、結婚すると4:6に逆転し、座り派が多勢になっていることだ。

 座り派の理由は、どちらの調査も、

 「便器の汚れを気にして/掃除が大変」

 「座ったほうが落ち着けるから/そのスタイルが楽だから」

 「家族から指摘されて」

 の順に多い。トイレ掃除をするのは妻が圧倒的に多いというデータもあり、この結果になるのは当然といえよう。

 筆者の周りの既婚女性(全員子持ち)に聞くと、やはり夫や息子には「座り」を要請している家庭が多かった。

 夫が座り派・Aさん(40歳・結婚5年目・IT系勤務)

 「結婚当初に座ってするように指示しました。素直に従っているようで、おかげでトイレ掃除も楽です」

 夫が座り派・Bさん(36歳・結婚3年目・デザイン系)

 「夫は衛生観念が著しく低い人間なので、ライオンの飛び跳ねデータをもとに座ってするよう説得。しぶしぶ承諾してくれましたが、便座の裏はなぜか今でも汚れています」

 夫が座り派・Cさん(34歳・結婚5年目・主婦)

 「幸運にも、夫は独身時代から座ってしているようです。汚れるのが嫌だから、と。ちなみに夫は独身時代からお掃除グッズを何種類も買い込むほどのきれい好きで、トイレ掃除も時々してくれています」

 夫が立ち派・Dさん(36歳・主婦)

 「夫も5歳の息子も立ち派。トイレ掃除が大変なので座ってするよう幾度なくお願いしたのに聞き入れてもらえず……。毎回イライラしながら掃除しています」

 立ち派の家の妻は「妊娠意欲」が下がる?

 なお、上記以外にも聞き取り調査をしていて、気づいたことがある。「立ち派」の家は、子どもがひとりの家庭が多いのだ。これは、単なる偶然かもしれない。

 だが、自発的に座って用を足す夫を持つCさんには、今夏2人目のベイビーが誕生予定だ。また、座り派を快諾した夫を持つAさんも2人目を検討中。

 その一方、しぶしぶ座ることを承諾してもらえたものの、今も夫と衛生観念の違いで争いの絶えないというBさんと、座り小便をついに聞き入れてもらえなかったDさんは、「2人目は考えられない」と断言している。

 座るか、立つか。

 大げさに言えば、この二者択一は出生率の問題にもなるということだろうか。確かに、衛生観念が高い夫を持てば、妻の家事の負担は減る。家族とはいえ、自分が飛ばしたものではない尿ハネ2300滴を、毎日のように便器内外をすみずみ拭き取らねばならない作業は、楽しいものではない。

 だから、ほんの少しでも「低負担」な夫を持つ妻のほうが、第2子、第3子の壁は低いのだろう。心と体の疲労度が軽減され、頑張って産もうか、という気になるかもしれない。

 実際、厚生労働省の調査でも、2人以上の子どもがいる家庭ほど、夫の休日の家事・育児時間が長いという結果が出ている。今回の調査でも、トイレ掃除を始めて、自分の尿ハネに気づいて座り派に転向する男性もいた。

 同じ「座り派」でも、「自発的」な夫と「しぶしぶ」座る夫とで、夫婦仲はもとより、家庭のにぎやかさまで変わってくるかもしれない……。そう思うと、いつまでも「男たるもの、立ってするのが当然だ!」と言い続けるのも考えものという気がしてくる。

 ※参照元:

 ・パナソニック 2015年「トイレスタイルの実態調査」

 https://sumai.panasonic.jp/toilet/alauno/shingata_alauno/survey.html

 ・SUUMO「SUUMOトイレの使い方アンケート」

 2015年6月、首都圏・中京圏・近畿圏在住の20~59歳までの男性(子どもなし)に調査・有効回答数は230名。

 http://suumo.jp/journal/2015/06/30/93037/

 ※厚生労働省「第13回21世紀成年者縦断調査」

 表18「夫婦数、妻の年齢階級、夫の家事・育児時間(平日・休日)、(再掲)子どもが『ほしい』と考えていた夫婦、子ども数、この12年間の出生の状況別」

 https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001141774&requestSender=estat

 (フリーライター 桜田容子=文)