肥満は感染症の危険因子 免疫機能低下でインフル悪化、肺炎など重篤症状も
■【STOP!メタボリックシンドローム】
生活習慣病のリスクを高める肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が、感染症発症の危険因子でもあることがさまざまな研究で明らかになりつつある。肥満が免疫機能を変化させることが原因とみられる。肺炎などの重篤な症状を引き起こすこともあるといい、専門家は「肥満はさまざまな病気のリスク要因であることを改めて認識してほしい」と呼び掛けている。(大家俊夫)
ぜんそくの原因に
日本女子大の佐藤和人学長(家政学部食物学科教授)らのグループは15年前から肥満と免疫に関する研究を続けてきた。同大大学院で三戸夏子氏(現横浜国大准教授)らが、高脂肪食を与え高度の肥満状態にしたマウスと普通食を与えたマウスの比較実験を行ったところ、前者の免疫機能が後者に比べて多様に変化していることが分かった。
同実験を指導した佐藤学長は「肥満によって免疫機能の調節をするサイトカインという生理活性物質のバランスが崩れ、免疫機能に変調を来した」と分析する。
免疫機能の変調は、さまざまな病気につながる恐れがある。例えば、免疫機能が低下し過ぎると肺炎などの感染症を引き起こし、過剰になるとアレルギーの原因になる。特に小児のぜんそくの危険因子になることが指摘されている。
術後の炎症悪化
最近の国内外の論文で、肥満がさまざまな感染症発症のリスク要因になる他、炎症を悪化させたり、がんの原因になったりしていることが報告されている。
2009(平成21)年に世界的に大流行した新型インフルエンザでは、死亡者や重症者に占める肥満の人の割合が高かったとする論文が昨年、発表された。肥満による免疫機能の低下が原因でインフルエンザに対する防御力が落ちたことが考えられるという。
また、別の論文では、内臓脂肪蓄積型の肥満の人が大腸がんの術後、肺炎になったり、傷が化膿(かのう)しやすくなったりすることが報告されている。人工関節を入れる手術の後、関節に炎症が起きやすくなることも分かった。
内臓脂肪蓄積型の肥満の人は、脂肪細胞が肥大化して脂肪組織内で炎症を起こし、感染症を悪化させる可能性があるという。
海外の研究では、がんを引き起こすリスク要因となっていることも指摘されている。
佐藤学長は「内臓脂肪蓄積型の肥満は認識不足のため放置されていることも多い。正常な免疫機能を維持するためには食事療法と運動療法による肥満の予防と改善が一番」と指摘。「高度の肥満になった人は専門医に相談するといい」と助言している。
■肺炎が再び増加、死因3位に
感染症のリスクで怖いのは、子供や高齢者で重症化の恐れがある肺炎だ。抗菌薬の進歩と公衆衛生の向上により、日本では制圧されたと思われていた。しかし、近年は再び増加傾向にある。平成23年の人口動態統計によると、日本人の死因で肺炎は、がん、心疾患に次ぎ、脳血管疾患を抜いて第3位に浮上。25年も同じ順位だった。
高齢化の進展により誤嚥(ごえん)性肺炎などが増えていることが主な原因だが、肥満の人の増加も一因とみられている。
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