あなたのがんや生活習慣病の発症リスクは? 「遺伝子検査」で体質を知り、未然に防ぐ
最近、自宅で手軽に行える「遺伝子検査サービス」が浸透してきた。検査キットに自分の唾液を出して送付するだけで、がんや生活習慣病など病気の発症リスクや体質の遺伝的傾向を知ることができるという。大手企業の新規参入が相次ぐなど、大きく注目されるヘルスケア事業。どれだけ簡単にできるのか、そして検査結果をどう役立てることができるのか-。実際にキットを試してみた。(産経デジタル)
「遺伝子検査サービス」の検査方法は、自分の唾液を提供するだけ。痛みがなく、特別な施設に行かなくても自宅で簡単にできるなど、時間や手間が省けるといったメリットがある。「唾液採取型」だけでもヤフーやDeNAといった大手企業が参入しており、このほか、ファンケルやKDDIは「口腔内細胞採取」や「血液採取」タイプを展開している。
筆者はDeNAが展開する「MYCODE」で実際に検査を受けてみた。検査メニューは3タイプ。この中から検査項目数が一番多い「ヘルスケア」を選んでみた。
「ヘルスケア」はがん38項目、生活習慣病19項目を含む全280項目の検査ができる“フルパッケージ”タイプ。価格は2万9800円とリーズナブルだ。検査項目が少ないベーシックタイプなら、各社5000円前後から購入可能だ。
DeNAのサイトで「ヘルスケア」を選択して購入すると、数日後に検査キットが郵送されてきた。まずはサイト上で会員登録を済ませる。検査結果の受信やレポート管理に必要だからだ。検査の流れはいたってシンプル。自分の唾液を専用容器に入れ、キャップを閉めてから返信用封筒に入れてポストに投函。あとは結果が出るのを待つだけだ。
送った試料(唾液)はDeNAと東大医科研の共同研究室で解析される。まずは唾液からDNAを抽出し、遺伝子情報を読み取る。解析データが出たら専用ソフトに投入して結果を分析。すべての検査が終わると会員ページにレポートが送信される。筆者の場合は、試料を送ってから2週間ほどで検査結果が出た。
サイト上で結果を確認してみる。ログインすると「○○さんの遺伝子型の疾患発症リスク」という検査結果が表示された。自分が日本人平均(1倍)と比較してどの病気にかかりやすいのか、簡単に一覧できる。平均の2倍以上の発症リスクがあるのが心房細動、骨パジェット病、クローン病と食道がん。とくにクローン病と食道がんは、それぞれ日本人平均の5.64倍、2.61倍と高い。ほかにも平均以上の数値(1.0~2.0倍)を示した疾患が、280項目のうち64個も見つかった。うち11個は心筋梗塞や心不全といった生活習慣病だ。
発症リスクのほか、それぞれの病気の詳細や早期発見の方法、効果的な検査や治療法などが細かく記されている。また、専門家が監修した生活改善アドバイスは「運動・生活」「栄養素」「食品・飲料」の3項目に分けてわかりやすく説明してある。唾液を送るだけで、自分の身体を遺伝子的な視点から理解して、発症リスクの高い病気を知り、予防や対策に役立てることができるのだ。
この検査結果を役立てる方法は、ほかにもあるのだろうか。近所のクリニックで先生に聞いてみた。
筆者「病院で受診するときに、遺伝子検査の結果を持ち込めば、先生はそれを参考にするのでしょうか」
先生「私の専門は内分泌内科なので、あまり遺伝子検査を参考にすることはありません。ただし、専門によっては貴重なデータになるはずです。例えば大腸がんなどは、遺伝子的な傾向がわかれば参考にすると思いますよ。検査結果を持ち込めば、大いに役に立つと思います」
数日後、上腹部などに痛みがあったので別のクリニックを受診した。筆者の食道がんの発症リスクは平均の2.61倍。「MYCODE」によると、食道がんは初期の自覚症状がほとんどなく、早期発見には内視鏡検査などが効果的だという。先生に遺伝子検査の結果を見せると「そうですか。では内視鏡で見てみましょう」。鼻から入れる胃カメラ(経鼻内視鏡検査)で食道や胃、十二指腸を検査した。異常は見られず、とりあえず安心した。
病気にかかるリスクを少しでも減らすには、自分の体質を知り、体に合った生活習慣を身につけることが大事。それを手助けする「遺伝子検査サービス」がさらに普及すれば、個人レベルでの疾患予防や対策が当たり前の時代になりそうだ。
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