外国人労働者にとって母国への仕送りは生活の一部で、ほとんどは合法的な取引だ。「なぜ口座を作るのか」「給与はどんな会社からいつ入るのか」「いつまで勤めるのか」など開設時に細かく確認し始めたところ、本人確認書類の開示に前向きな顧客が増えるなど好影響が出たという。
ただ、金融機関だけの対応では限界があるのも事実。技能実習生や外国人留学生が政府が表向き認めてこなかった単純労働の“裏口”になってきたのは公然の事実だ。労働環境の過酷さから失踪する実習生は後を絶たず、犯罪組織に付け入られる隙を生んでいる。
改正出入国管理法の施行に伴う外国人労働者受け入れ拡大の新制度では、受け入れ先に日本人と同等以上の報酬を求め、仲介業者による搾取や給与不払いを防ぐため記録が残る預金口座への振り込みを義務づけた。口座の不正売買を防ぐには、こうしたルールが形骸化しないよう、業界横断で取り組むことが重要だ。(田辺裕晶)