【論風】「安倍一強」の二面性 国民の評価は外交か内政か (3/3ページ)

国会議事堂(斎藤良雄撮影)
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 首相は国会でこれらの一連の問題に関し、「丁寧な説明をする」とか「膿(うみ)を出し切る」などと答弁しているが、やっていることは、この反対のことだらけと言えよう。

 延長された国会で、真相解明がどれだけできるか分からないが、やはり国民がある程度、納得のいくまで、森友・加計問題を議論してほしいと思う。

 6月の主要新聞各紙の世論調査をみると、確かに内閣支持率は回復基調にあるが、それは最近の外交面での成果が評価されて生じた現象である。森友・加計問題を中心として内政に関して、従来と同じような批判が続いている。

 例えば、共同通信によると、財務省が決裁文書改竄の関係者を処分したことで、森友問題は決着したとの回答はわずか15.8%、逆に決着していないとの回答は78.5%に上がった。

 確かに国際的には重要な課題があるがと言って、これを無視し安倍首相の続投を認めるのは、これからのわが国の倫理観の喪失につながりかねない危険もはらんでいると言えよう。この「安倍一強」の二面性のどちらに国民が重きを置くのか。日本の将来に大きな問題を投げかけている。

【プロフィル】石弘光

 いし・ひろみつ 1961年一橋大経卒。その後大学院を経て、講師、助教授、教授、学長。専攻は財政学。経済学博士。現在、一橋大学ならびに中国人民大学名誉教授。放送大学学長、政府税制調査会会長などを歴任。80歳。東京都出身。