確定申告の受け付けが16日から始まるが、徴税事務トップの佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官が国会で更迭を要求されるなどの異常事態が続いており、徴税の現場からは業務への影響を懸念する声が出ている。学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐり、担当局長時代の「記録は破棄した」などの国会答弁に疑義が生じているためだ。だが国会への出席を与党が拒み、国民に納税を呼び掛ける国税庁長官としても取材にも応じず、姿を隠したままだ。
■「税金払いたくない」
「不安はある」。ある国税局の職員は、確定申告を前にこう吐露した。税務署の窓口では「長官は書類を廃棄したといっても許されるのに、納税者はなぜダメなのか」「税金を払いたくない」といったクレームが寄せられているという。
確定申告後の税務調査では「書類を廃棄した」という言い訳は通用しないだけに、元国税調査官の松嶋洋税理士は「佐川長官への反発から納税者が非協力的な対応をして、税務署の職員も実務をやりにくくなるのではないか」と危惧する。
佐川氏は森友学園側との交渉記録について「廃棄した」と答弁してきたが、財務省近畿財務局の担当者と学園側が売買契約を結ぶ前に価格協議をしていたことをうかがわせる音声データの存在が判明。次々と出てくる事実が、これまでの説明と食い違っている。