英紙フィナンシャル・タイムズは、連日にわたってこの事案を取り上げている。厚労省による電通本社への立ち入り調査を報じた14日の記事では「電通が日本の一流企業であるため無視できない事案だと政府がみなしたことが、国民に衝撃を与えた」と分析した。
一方、英誌エコノミストは「過労死白書が働き方改革の必要性を示している」と指摘。労働生産性の指標となる就業1時間当たりの国内総生産(GDP)を比較し、こう強調した。
「過重労働は経済の役に立っていない。労働者が燃え尽き、ときに死ぬという事実は、悲惨であるだけでなく無意味だ」
「あした娘のプレゼントを買いに行くんだ」
電通の過労自殺以外にも報じられた事案がある。
「青年の心臓疾患は、日本の『過労死』文化が原因だった」との見出しを掲げたのは、英紙ガーディアン。外国人技能実習生だったフィリピン国籍のジョーイ・トクナンさん=当時(27)=の過労死を取り上げた。
トクナンさんは岐阜県の鋳造会社で実習生として勤務。2014年4月に従業員寮で死亡した。岐阜労働基準監督署は、直前3カ月間の時間外労働が「過労死ライン」の月80時間を上回る月96~115時間だったとして、今年8月に労災を認定している。
「彼は乏しい給料の大半を妻と5歳の娘に送金していた。あした娘のプレゼントを買いに行くんだ、と同僚に話した翌日に亡くなった」。記事ではそんなエピソードも明かされている。