笹井氏「正確さを旨とする科学論文において、こうした問題があることは、決してあってはならないことです。共著者である私が論文に存在した複数の問題を見抜けなかったことは慚愧(ざんき)の念に堪えません。今回の論文で私は第4段階の文章の書き上げから参加したため、多くのデータはすでに実験ごとに図表になっていました。研究不正の判断を受けた2つの実験データは、2012年前半、あるいはそれ以前の実験のものだったので、残念ながら私は生データやノートを見る機会がありませんでした。また小保方研究ユニットリーダーはあくまで独立した研究室のリーダーで、私の研究室の直属の部下ではないという立場だったため、私が通常、大学院生に指導するときに言うような『ノートを持ってきて見せなさい』というようなぶしつけな依頼をするということが現実的には難しかったこともあります。図表となっていたデータは他の図表データと整合性が高く、それ自体を見るだけで、問題点を見抜くのは非常に困難でした。私はむしろ自分の参加後に新しく追加された実験であるライブ・セル・イメージングなどの生データについて、一緒に解析を行いました」
「今回の研究は複数のシニアが、共同著者が複雑に入る特殊な共同研究のケースでした。そのため、第4段階の文章の書き上げをした私と、その前の段階の実験を指導した若山さんが、別の人間であったという例外的な事情がありました。ラストオーサーであるバカンティ教授も米国にいらっしゃるという形でした。それが二重三重のチェック機能を発揮できなかった理由の一つだと反省しております。現実的にはネイチャーに投稿する過去の実験データにさかのぼって一つ一つの生データをすべて確認することは現実的には難しい。しかし、その中でも、若山さんと力を合わせて小保方さんへの注意を喚起できなかったのか。また文章書き上げに協力した私は文章全体を俯瞰(ふかん)する立場にあったわけですので、その責任は重大であると認識しており、大変申し訳なく思っております」