インド 3カ月で脱線3件、死者200人 人員不足、24時間連続勤務の運転士も

 
事故から一夜明けたインド南部アンドラプラデシュ州クネルの脱線現場=1月22日(AP)

 インドは、大きな鉄道脱線事故3件が昨年11月から今年1月にかけて立て続けに発生し、鉄道の安全性を問う声が上がっている。現地紙タイムズ・オブ・インディアなどによると、3件の事故での死者数は約200人に上る。国営インド鉄道の人員不足や近代化の遅れが改めて浮き彫りになった。

 昨年11月20日、北部ウッタルプラデシュ州カンプール付近で151人が死亡する脱線事故が発生。その後も、12月28日に同じカンプール付近で63人が負傷する脱線事故が発生、さらに年が明けた1月21日にも南部アンドラプラデシュ州クネルで急行電車が脱線し、少なくとも40人以上が死亡した。

 事故原因はいずれも調査中で、運行妨害の可能性もあるとされている。しかし、同国は以前から国営インド鉄道の設備・施設の老朽化や人員不足が指摘されてきたこともあり、改めて鉄道全般の安全性を問う声が相次いだ。

 専門家によると、インド鉄道は安全に関わる部門の人員不足が14万2000人に達している。1月の事故が発生した東部海岸鉄道でもエンジニア1571人、警備員67人、信号通信士93人などが不足しており、安全に関係の深い部署での空白ポストが4分の1もあるという。

 さらに、中南部鉄道の幹部も「人手が足りず、20~24時間連続で働いている運転士や信号士もいる。重要な職種でこれだけ人がいないと、事故の確率も高くなってしまう」と述べ、人員の補充がすぐにも必要と訴えた。

 また、近代化の遅れなどについて、政権の責任を問う声もある。野党議員の一人は、脱線事故件数が2015年4月~16年3月の52件から、16年4月~17年1月には68件に増加していると指摘。「現政権は発足以来、高速鉄道など華やかな面を声高に叫ぶ一方で、人命損失については傍観者であり続けている」とモディ首相を批判した。

 相次ぐ重大事故を受け、スレシュ・プラブ鉄道相は、日本と韓国に安全面での技術支援を要請し、専門家の派遣を求めた。

 日本はインドへの鉄道インフラ輸出に注力しているが、運行管理や保守整備など安全面でも貢献できる分野が多そうだ。(ニューデリー支局)