電通本社など労働局が強制捜査 労基法違反容疑 長時間残業が常態化か

 

 昨年12月に女性新入社員が過労自殺した電通をめぐり、東京など各地の労働局は7日、労働基準法違反容疑で東京本社(港区)と関西(大阪市)、京都(京都市)、中部(名古屋市)の3支社を一斉に家宅捜索した。厚生労働省は法人としての電通を同法違反容疑で書類送検する方針。

 各労働局が「臨検」と呼ばれる立ち入り調査をし、勤務記録や入退館記録などを調べた結果、他の複数の社員に労使協定(三六協定)を超えた残業をさせるなど違法な長時間労働が常態化していた疑いが強まり、強制捜査に切り替えた。

 複数の厚労省関係者は「刑事事件としての立件を前提にしている」と述べた。労働局は会社の勤務記録を調べるなどして、労務管理の実態解明を進める。電通は「捜索が入ったことは事実。全面的に協力する」とのコメントを出した。

 遺族側によると、亡くなった高橋まつりさん=当時(24)=はうつ症状発症前、電通の労使が合意した時間外労働の上限を超える月105時間の残業をした。一方、会社に残された残業時間の記録は労使協定の範囲内ぎりぎりに収まっており、遺族側は残業の過少申告があったと主張している。

 労働局が調べたところ、他の社員もこうした労使協定の上限を超えて違法な残業をしていた疑いが浮上。2014年と15年の2度にわたり、違法な長時間労働について労働基準監督署から是正勧告を受けながら改善していなかったことも分かっている。

 厚労省によると、労働基準監督官は刑事訴訟法に基づく特別司法警察員として、任意の取り調べや逮捕、検察庁に送検する権限を持つ。