SaaS~変革のプレイヤー群像

工場や店舗のノンデスクワーカー向けSaaS 「カミナシ」が“現場”を変える (3/4ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

作り手不足解決のカギは「ノーコード」

――コロナ禍で「カミナシ」を取り巻く環境にも変化はありましたでしょうか

諸岡CEO:

 コロナ禍で飲食業界やホテル、レジャー産業などは大きなダメージがありました。その結果、各業界で品質管理部門の人員が削減されるという現象が起きています。ひどいケースですと半分以下に削減されたところもあります。

 高品質な商品やサービスを提供する上では品質管理は非常に重要です。食品業界で言えば、食品衛生法の改正で、今年6月から食品を取り扱う事業者全てに対し、衛生管理の国際標準「危険度分析による衛生管理(HACCP)」に沿った衛生管理の完全義務化が始まり、品質管理基準がいっそう高まりました。一方で人員は削減せざるを得ない。このギャップをどう埋めるかということで、企業もITを積極的に活用するしかないと考えているようで、カミナシへの問い合わせが増えています。

 削減せざるを得なかった人員を補完するために「カミナシ」の活用を考える企業が最近増えているように思います。

――旧態依然としていた職場環境や業務管理がコロナ禍を契機に見直され、DX化が加速した側面もあると

諸岡CEO:

 DX化は確実に進んでいると思っています。また、この流れは今後、変わらないとも思いました。4年半前の創業時を振り返りますと、当時はお客さんからよく、「現場はiPhone、iPadの持ち込みは禁止になっている」などと言われたものです。その次が「クラウドって危ないよね」という反応です。ですが、今ではそんな質問をしてくるお客さんは皆無です。大企業では「DX推進室」といった部署を新設して、さまざまなデジタルツールを試していますが、その中で「カミナシ」の導入も検討していただいているようです。

 ただ、問題点もあります。それは圧倒的に作り手となるエンジニアやそれらを推進する人材が不足しているということです。ノンデスクワーカーの領域にはITで解決できる課題がまだまだたくさんあります。しかし、それらを解決できるようなプロダクトの作り手や、導入後に現場に推進する人材が不足しているのです。

――デジタル人材不足という課題の解決策は

諸岡CEO:

 2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されましたが、低年齢時から教育していくことが大切だと考えます。また、ゆくゆくはノーコードで開発できる環境が整っていく可能性があります。システムエンジニア(SE)でなくても要件定義できるような環境です。

 今やウェブサイトのコンテンツ作成のために使うコードであるHTMLを知らなくても、かんたんにホームページやブログを作れるようになりました。豊富なテンプレートからデザインを自由に変更し、さまざまなプラグインでメールフォームなども容易に作成できます。マウスでドラッグしたり、クリックしたりするだけでいいのですが、同様に、C++といったプログラミング言語を知らなくても、ノーコードでシステムを組むことができれば、そこから思考が回り始め、ノンデスクワーカーの現場にもデジタルを推進する人材が生まれる可能性が十分にあると考えています。

 カミナシでは導入いただいた顧客に対して、現場の業務に合わせたカミナシの設定や使用方法などのオン・ボーディングの支援もしています。はじめにシステムを構築して終わりではなく、「カミナシ」では現場の業務の改善が図れるという特徴があります。「もっといいものにしよう」という「カイゼン」文化に生かすことができるのです。創業からの4年半で、ノンデスクワーカーの現場にも確実にDXの波が押し寄せてきていると実感しています。

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