クリーンエネルギー自動車の本命は、FCVよりも電気自動車(EV)だろうか。英、仏では、40年までに温室効果ガスを排出する自動車の販売を禁止する方針を公表し、EVの20年度累計目標をそれぞれ150万台、200万台とした。
30年までに、インドは全ての販売自動車をEVに、中国は新車販売の40~50%をEVにすると発表した。野心的な目標ではあるが、世界の自動車の保有台数は10億台を超え、年間販売台数は1億台と膨大であるので、仮に目標が達成されたとしてもEVだけでは自動車の地球環境問題は解決しない。
中国、インドでは、電源の大部分が石炭火力発電なので、都市部の大気汚染対策としてはともかく、地球温暖化対策としては矛盾している。
EVには、蓄電池の性能、充電時間、価格に課題がある。馬力を必要とするバス、トラックや長距離運転には向いていない。
FCVには、水素ステーションのほか水素価格や規制緩和に課題がある。地球温暖化対策の重要性と世界の保有台数を考えれば、EVかFCVかではなく、それぞれの利点を生かして両方を推進するということだろう。
半世紀前の英断
日本の電源構成は、その84%が石炭、石油などの化石燃料である。深夜電力はほぼ石炭火力で賄われているので、それを充電した電気自動車に乗っていて「地球環境派です」と言うのは笑い話になりかねない。
EVの普及をCO2削減につなげるためにも、天然ガス発電に水素混焼を進め、また完全CO2フリーの水素発電を実用化する必要がある。発電用に大量消費されれば、水素価格の低下も期待でき、FCVのみならず、産業用、業務用分野での水素利用が進む。