【論風】水素社会への展望 日本主導で液化・発電実用化を (1/3ページ)

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 □元経済産業事務次官・北畑隆生

 地球環境問題とエネルギー制約を同時に解決する次世代のエネルギーとして水素への期待が高まっている。

 今年1月、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが原油から水素を取り出し、二酸化炭素回収貯留(CCS)装置で二酸化炭素(CO2)を除去し、将来CO2フリーの水素を輸出すると発表した。

 サウジの膨大な財政を賄う財源は石油収入であるが、財政赤字が続く。石油販売以外にも事業を多角化して収入増を図り、地球環境問題にも取り組む姿勢をアピールしている。

 豪州では、未利用の褐炭から水素を大量製造し、液化して日本に輸出することを研究中である。

 EVの効果には限界

 需要サイドはどうか。日本のエネルギー消費の23%は、運輸部門である。水素を使って走る燃料電池自動車(FCV)に期待がかかるが、政府の普及台数目標は、2020年度までに4万台、30年度までに80万台程度である。燃料を供給する水素ステーションの整備が進まないことがハードルになっている。

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