日本自動車研究所は、ウェル・ツー・ホイールのCO2排出量を10年度に燃料・動力別で試算した。それによると、ガソリン車が1キロ走行した際に排出されるCO2は147グラムで、ディーゼル車が132グラムだ。一方、走行時にCO2を出さないEVはクリーンなイメージだ。
ただ、EVの充電に石炭火力発電による電力を使うと、EVのCO2排出量は109グラムに達し、ガソリン車やディーゼル車より圧倒的に少ないわけではない。
このため、化石燃料による発電に依存する中国などの新興国でEV化が進んでもCO2削減効果は限定的だ。効果を高めるには、太陽光などの再生可能エネルギーの方が望ましい。EVが環境対応に有効かどうかは、各国がどれだけ化石燃料依存のエネルギー構成を見直せるかにかかっている。
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■エンジン車排出量削減「優先度高い」
今後も新興国を中心に自動車の保有台数は拡大するとみられ、35年時点で約85%はハイブリッド車(HV)を含むエンジン車で占められるとの予測もある。そうした理由からマツダは「将来的にも大多数を占めるエンジン車のCO2排出量を下げる取り組みの優先度は高い」(冨山氏)と判断している。
大手自動車メーカーでエンジン技術者として従事した経歴を持つPwCあらた監査法人の藤村俊夫顧問は「多くの人が購入可能な価格やCO2低減効果などを総合的にみて、全方位で次世代車の開発を進める力量がメーカーに求められる」と指摘。マツダのような中堅メーカーは得意技術を武器に協業先を広げ、外部の力を利用しながら競争力を高める必要性を説く。
26日の株主総会で、小飼氏からバトンを引き継ぎ自動車産業の変革期を生き抜く決意を述べた丸本新社長だが、企業規模を考えれば、世界市場でマツダが個性を武器に光り続けるためのハードルは高い。経営資源を得意な技術分野に集中させ、電動車などの次世代市場に結びつける力量も試される。(臼井慎太郎)