ただし、アンモニアは大気汚染の原因となるNOxを排出する。そこでIHIは、アンモニアを貯蔵タンクから燃焼バーナーに供給する方法を工夫、NOx排出濃度を従来の石炭火力と同程度に抑えた。今後はさらなる排出低減に向け改良を重ねるほか、実際の石炭火力への採用を想定した事業化調査(FS)を行い、2020年にも実用化したい考えだ。
石炭火力はCO2排出量が多いのが弱点で、最近は再生可能エネルギーの普及で先行する欧州を中心に、“排斥”の動きが広がっている。しかし発電コストが低いため、そう簡単になくせないのも実情。IHIによると、国内の石炭火力発電所を同社の燃焼法に置き換えれば、国全体のCO2排出量を4%減らせるという。藤森俊郎・産業システム・汎用(はんよう)機械事業領域事業開発部長は「国内の電源構成の約3割を占める石炭火力に適用されることで、日本のCO2排出削減に大きく寄与する」と社会的意義を強調する。
石炭火力へのアンモニアの活用は、電力中央研究所や中国電力も技術開発を行っている。中国電力は昨年7月に水島発電所(岡山県倉敷市)で実験を実施、燃やしても発電効率が落ちないことを確認した。当初は燃料に占めるアンモニアの割合を0.6%と想定していたが、天候の影響で出力が12.0万キロワットに下がった分、0.8%とやや高まった。それでもIHIの実験よりはかなり低いが、事業用の発電所で燃やしたのは国内初だ。同社は、一定条件下で排出されるNOxの濃度が下がる傾向にある事実も発見。関連特許を出願した。