「その内容は価格に伴っているか」 “日本一”のラーメン店「蔦」だからこそできた値下げ (3/8ページ)

 作り手が自分自身である以上、自分と相性が良くなければ、結局、頭の中で思い浮かんだ味のイメージと食い違ってしまうからだという。

 イメージできない味は創らない

 「実際に手を動かす前に、創ろうとするラーメンの味をイメージするんです。次に、その味を表現するために、どのような素材がどの程度必要なのかを考えます。相性の良い素材とめぐり逢うことができれば、ほぼ確実に、その素材でイメージどおりの味を創り出すことができます。裏を返せば、ある素材を用いて想像を超える味が出せたとしても、それが自分のイメージを凌駕(りょうが)しているのであれば、今の自分には使いこなせていないということ。そういう素材を使うことはありません」

 素人考えだと、「想像以上の味が出せるのであれば、その素材を使ったら良いじゃないか」となるのだが、そうではないらしい。どうやら大西氏は、常に一定水準以上の味を提供できるようでなければ、料理人として失格という考えを持っているようだ。

 「朝イチに作ったラーメンが最もおいしく、営業終了間際に作ったラーメンはイマイチ。そのような、提供する味にブレがあるような状態には、私自身が精神的に耐えられません」

 全く新しい味に挑戦

 数え切れないほど味を変えた結果、現在「蔦」が提供している「醤油Soba」は、全く新しい、世界初の味わいに仕上がっている。

蔦の「醤油Soba」。チャーシューの上にトリュフパウダーが載る(PRESIDENT Onlineより)

蔦の「醤油Soba」。チャーシューの上にトリュフパウダーが載る(PRESIDENT Onlineより)

 「ラーメンとは本来、何種類ものうま味で飾り立てるような料理ではない。世界に誇ることができる日本食としてのラーメンとはどのようなものなのか、自分なりに色々と考えてみました。その結果、ラーメンとは、着飾ることなくシンプルにおいしさを表現すべきものだと思い至ったのです」

 このような考えに基づき、店主は味の根本的な見直しに取り掛かった。こうして、2017年6月に完成したのが、店主が「全く新しい味だから『新味(しんみ)』」と称する1杯だ。

 醤油ダレは、和歌山県の二年熟成生揚げ醤油をメインに、長野県産の丸大豆本醸造濃口醤油と白醤油をブレンドした醤油に、ムール貝・牛肉・ポルチーニ茸・乾物・野菜の出汁を合わせたもの。

ラーメンにとって必要不可欠な「適度な品の悪さ」を演出