ほかにもハウステンボス(長崎県佐世保市)やアドアーズ(東京都港区)といった事業者が、アミューズメント施設への導入を進めているVR。元年と言われた昨年以上に急激なスピードで広がっているが、どのような分野でも、普及・浸透が進むほどさまざまな問題が見えてくる。VRアトラクションの場合は、遊園地のアトラクションのように安全に遊ぶことができるか、話題になっているVRを子供も楽しむことはできないのか、などといった問題が、これから先の展開に影響を及ぼしそう。
これに対して業界関係者が集まって、解決策を検討していくための組織が今年5月に発足し、7月18日に発表会見を行った。一般社団法人ロケーションベースVR協会で、正会員には「VR ZONE SHINJUKU」を展開しているバンダイナムコエンターテインメント、業務用ゲーム機とアミューズメント施設運営を手掛けるタイトー(東京都新宿区)、ベンチャーとしてVRアトラクションを開発しているハシラス(東京都千代田区)などが名を連ねている。代表理事はハシラス代表の安藤晃弘氏で、事業者同士が情報交換を行い、ロケーションベースVRの規格化、統一基準、ガイドラインの作成及び普及などに取り組んでいく予定だ。
タイトーやバンダイナムコなど老舗のゲーム企業は、アミューズメント施設運営の経験が豊富で、利用者に安心して遊んでもらうためのノウハウを持っているが、VRの場合は、視野をふさいだ状態で動くことも多く、どこに危険性があるかを検討する必要がある。新しいテクノロジーを積極的に取り入れ、今までとは違った製品やサービスを生み出す事業者はベンチャーも多い。新興勢力の開発ノウハウと、老舗企業の安全性確保や運営に関する検討成果を合わせることで、より安全で楽しいVR体験を、街中のアミューズメント施設でも提供できるようになる。
視力や成長への影響から、13歳未満は体験させないことが多いVRが、実際に人体に及ぼす影響の医学的な検証も、協会が中心となって進めていくことで、統一した見地を元にした事業展開が可能になる。世界的に成長分野として期待されながら、不測の事態を受けて停滞してしまうこと避け、ロケーションVRが大きな産業となり、新しいエンターテインメントとして定着していくためにも、協会の活動に期待がかかる。