駒には相手に取られたら負けのものと、取らせたら勝ちのものが半分ずつあって、動かす時に見て考えてしまう。そうした視線をお互いに読み合って、駒の属性を見極めることが勝利につながる。自分の視線を操作することで、相手に駒の属性を誤解させるようなプレーも可能。ギャンブルでもゲームでも、相手の視線を読んでの心理的な駆け引きが重要となる。それをバーチャルでもできるようにしたゲームと言えそうだ。
こちらは、6月に開催された第25回 3D&バーチャル リアリティ展(IVR)への出展物。ステップに足を乗せ、VRヘッドマウントディスプレーを装着し、目に見える森の中の世界で交互に足を踏み込むと、ステッパーと連動して見える世界が動き出し、自分が森の中を歩いている感覚を味わえる。シェルパ(福岡市中央区)という会社が展示していたもので、ほかにもルームランナーやエアロバイクといったフィットネス機器とVRを組み合わせ、居ながらにして別の場所を動き回る楽しさを与えていた。
建築用のCGパースや景観シミュレーション制作などを行っている積木製作(東京都墨田区)が展示していたのは、高所での作業が持つ怖さをVRで体感させてくれるトレーニングシステムだ。VRヘッドマウントディスプレーを装着し、両足にトラッカーを取り付け、手にコントローラーを持って立つと、そこが15階建てのビルを建設している現場になる。体験者が屋上の縁にかけられた足場の上を歩いていくと、建築資材を取って欲しいという声が聞こえて来る。
体験者が屋上の縁からいったん内側を向き、資材を手に取ってから振り向くと、真下まで続くビルの外壁が見え、資材を求める声がそちらから聞こえてくる。答えて手渡そうと身を乗り出した瞬間、体験者は屋上から転落してしまう。歩いた時に見える周囲の光景や、作業のために体を動かす行為が、実際の工事現場で同じような状況になった時のことを強く感じさせ、そこでの気の緩みが転落に繋がることを体験者の心身に強く刻み込む。現実を再現するVRならではの効果と言えそうだ。