渡辺さんは国鉄に入社し、最初の職場は貨物の連結などをする部署だった。直接運転することはなかったが、ディーゼル機関車の力強さや石油を積んだタンク貨車の特殊な揺れ方を記憶していた。会津若松駅長に就任し、磐越西線の難所も体感してきた。春遅くまで雪が舞い散る気候。石油列車の車輪はかなりの確率で空転し、最悪、停止する。そんなときには、後ろから別の機関車で押して脱出するしか手がない。「(JR)貨物側は大丈夫だと踏んだんでしょう? 要請もなくサポートの機関車を用意するのはちょっと…」。部下の意見はもっともだった。