■廃車寸前、馬力低下を懸念
磐越西線ルートでの石油輸送が始まった。3月25日、根岸(横浜市)を出発した石油列車は20両のタンク貨車タキ1000を牽引(けんいん)して北へ進む。
20両の内訳はレギュラーガソリン8両、灯油2両、軽油6両、A重油4両となった。同日深夜、新潟貨物ターミナル駅(新潟タ駅)に到着。ここからタンク貨車10両が切り離され、ディーゼル機関車DD51(重連)に連結された。運転士はJR貨物の東新潟機関区所属の斉藤勉さん。キャリア30年のベテランが慎重にブレーキを解除し、ノッチ(アクセル)を上げていく。26日午前1時。予定通りの出発だった。
◆磐越西線で輸送
会津若松駅近くのホテルに宿泊していたJR貨物郡山総合鉄道部所属の運転士、遠藤文重さんは、午前3時に起床。食事を取り、会津若松駅に歩いて向かった。傘を差すほどではなかったが、みぞれ交じりの小雨がぱらついていた。「山の上はどうかな…」。歩を進める遠藤さん。気が張っているせいか、寒さは感じなかった。
会津若松駅には線路を管理するJR東日本の関係者が20人ぐらい集まり、出発の準備が進められていた。午前4時近く、暗闇の中から石油列車が発着場にやって来た。機関車の前には「たちあがろう 東北」のヘッドマークが飾られている。運転席から斉藤さんが降りてきた。腹に響くようなDD51のエンジン音が会話を邪魔した。「この先は気をつけて。天候悪そうだから」。斉藤さんのその言葉だけが、遠藤さんの耳に残った。
遠藤さんは運転席に乗り込み、いつものように指さし確認をしながら、運転手順をこなす。ふと時計を見ると、発車時間を15分ほど過ぎていた。機関車を付け直す作業があり、それが原因かもしれない。「くそ、遅れてるじゃないかよ」。いやな予感がする。