S&WはCB&Iが証券取引委員会に提出した資料によると、買収価格は2億2900万ドル(当時のレートで約270億円)。東芝のどこに、そんな会社を抱え込む余裕があったのか。
2点目は負債の額だ。買収する場合はバイヤーサイドとセラーサイドのファイナンシャルアドバイザーや会計士が企業の財務内容を精査する。確かに資産や負債に対する評価方法によって違いはでるが、それでもきちんと精査されていれば、買収価格の数十倍の損失が発生するというのは考えにくい話だ。
そして3つ目は問題となっているジョージア州とサウスカロライナ州の原発工事だ。この工事を08年に受注したのはS&Wの親会社で13年2月にCB&Iに買収された「ショー・グループ」とWHのコンソーシアムだ。WHは買収するまでこの2つの工事をめぐって「S&W」と争ってきた。東芝は買収後、「フルアー」の調査で損失が発覚したというが、果たして本当なのか。
東芝は2月14日の16年度第3四半期の決算発表で損失額を含め、一連の問題を明らかにする。
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【プロフィル】松崎隆司
まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。著書は「堤清二と昭和の大物」「どん底から這い上がった起業家列伝」など多数。54歳。埼玉県出身。