ビール党は歓迎も… なぜ酒税一本化に「10年」かかる? 不可解さ拭えず (3/3ページ)

 さらに、大型M&A(企業の合併・買収)が相次ぐなかで世界からも取り残された。17年度改正で打ち出した税額統一は日本勢の国際競争力向上を図る観点もあっただけに、今後10年近くを費やす点に違和感も残る。ビール大手は税額統一を評価するものの、アサヒビールの平野伸一社長が一本化された際の税額は「主要諸外国と比べ非常に高い水準」と語るなど、一段の減税を求める方向で足並みを揃える。

 しかし、大手各社はそれぞれに3区分の販売比率は異なり、税額統一に対するかなりの温度差や思惑の違いも存在する。自民党税制調査会の宮沢洋一会長が「メーカーの研究開発の成果はビールに一本化される」と述べるように、各社の商品化の流れは税額統一に伴い、いずれ収斂するに違いない。これで若者のビール離れに象徴される長期低落傾向に歯止めをかけられるかは見通せず、消費者動向を睨みながらの手探りの商品開発に追われることに変わりはない。

 (経済ジャーナリスト 水月仁史=文)(PRESIDENT Online)