ビールや食品、外食などの大手企業が相次いで地域に根差した商品開発を強化している。これまでは本社主導の開発で、全国に標準品を販売してきたが、地域に権限を委譲し、地元になじみの深い味や文化、気質を取り入れた商品づくりに力を入れている。いずれも地元愛にあふれた商品の販売は好調。背景には消費者の嗜好(しこう)の変化もあるようだ。
観光関係者と企画
6日、東京・日本橋にあるビルの一室で、キリンビールが来年6月に発売する東京限定「一番搾り」のワークショップを開いた。観光関係者ら14人とキリンの社員が打ち解けた雰囲気の中で、東京らしいビールのアイデアを出し合った。
キリンは今年5月に47都道府県別の一番搾りを発売し、地元の原材料や郷土料理の味を取り入れて人気を呼んだ。年間の販売目標は当初120万ケース(1ケースは大瓶20本換算)だったが、10月には260万ケースに上方修正した。
ヒットした理由について布施孝之社長は「開発段階から地元愛の深い人たちと共同で作っているためだ」と説明する。同社は全国各地でワークショップを開催し、地元の人たちと商品の味覚からコンセプト、飲み方まで一緒に考えており、商品の愛着度が高められている。
来年も4~7月にかけて、全国各地で発売するため、12月から各地でワークショップを開催している。キリンマーケティングの高橋正富東京支社長は「今年はモノからコト消費にシフトしたため、来年の新商品はビールを通じた楽しい体験を提案したい」と意気込む。
カルビーも今年5月に福島県の郷土料理「いかにんじん」の味を再現した「ポテトチップス」を東日本エリアで数量限定で発売し、大ヒット商品となった。福島市出身の伊藤秀二社長が発案し、地元住民と試食を繰り返しながら商品化した。