鴻海精密工業による買収手続きが12日完了した。4月の買収契約以来4カ月を経てシャープは鴻海グループ企業として新たなスタートを切る。“オンリーワン技術”への過信が経営の病巣を広げたシャープは、巨額投資でコスト競争力と技術力を高めてきたアジア系企業の代表格である鴻海にひれ伏すほかなかった。国内製造業には同様な“被買収予備軍”企業も多く、「日本のモノづくりは大丈夫か」という危機感は高まるばかりだ。
日本は「草刈り場」
中国ハイアール・グループ傘下に入った三洋電機、中国美的集団が6月に買収した東芝の家電事業会社「東芝ライフスタイル」、NECのパソコン事業を引き受けた中国レノボ・グループなどアジア系企業に買われた電機メーカー・事業は少なくない。
今後を見通しても、産業革新機構の支援で経営再建を目指すジャパンディスプレイや、家電事業について「この1、2年のうちに(存続か売却か)見極める」(東原敏昭社長)方針の日立製作所など、外資系企業に買われる企業・事業がさらに増える可能性は高い。
安くて高品質-。世界市場で長らく優位性を保ってきた日本の製造業が地盤沈下を招いたのは、韓国や中国、台湾系の家電メーカー、受託製造サービス(EMS)の圧倒的なコスト競争力に太刀打ちできなかったからだ。