「家電王国」で知られた日本の電気製品が、巨大市場インドで急速に存在感を失っている。日系メーカーは採算の悪化などを理由に続々と撤退し、大手電機8社のうち現在も展開するのは実質的に3社だけ。韓国や中国、地場勢との競争が激化しており、シェア奪回への道は険しそうだ。
個人向け事業を継続しているのは主にパナソニック、日立製作所、ソニーの3社。不正会計問題に苦しむ東芝は業績悪化を受け昨年、白物家電など家庭用製品から撤退した。かつてブラウン管テレビなどを現地生産していたシャープも採算悪化で事業を縮小し、現在は事務機器販売のみ。三菱電機もエアコン以外は展開していない。
「日本メーカーは高価格帯の製品では強い」と、首都ニューデリー東部の家電量販店オーナー。ただ、インドの中間層以上の家庭ではメイドを雇って家事を任せる習慣があり、例えば洗濯機では「ドラム式など高付加価値の製品が売れにくい」(日立幹部)という。
一方、主要製品を現地生産する韓国勢は価格面で優位に立つ。現地紙によると、サムスン電子の2014年度のインド売上高は4000億ルピー(約6120億円)超で、日本勢を圧倒。日系メーカーの現地幹部は「広告費が韓国の本社予算から潤沢に投入され、攻めの姿勢がすごい」と舌を巻く。