今回のシステムでは、日本の上空3万6000キロメートルに位置する静止衛星の活用が想定されている。現時点では、国内外の調整が必要とあって、衛星を実際に利用することはできない。将来的に、ソフトバンクでは同社単独での衛星打ち上げも視野に入れている。
衛星と直接やり取りできる携帯電話、いわゆる衛星携帯電話ではなく、通常の携帯電話が直接、衛星とやり取りするという今回のアイデアで、課題となったのは遅延と損失。たとえば遅延については、携帯電話-衛星-衛星基地局というルートの往復で約0.5秒かかる。一般的なLTE通信の場合、基地局と携帯電話は約200キロメートル離れた場合で遅延は約0.00066秒と、ここまでは許容されるレベル。通常は数百メートル~数キロメートル程度のサービスエリアだ。衛星経由の約0.5秒という遅延は、LTEの標準規格からすればタイムアウトと判定されてしまう。
◆2つの難題を解決
そこでソフトバンクでは、端末と基地局のパラメーターを少し手直しして、0.5秒という遅延でも通信を続けられるようにした。この遅延対策部分は独自の取り組みで、LTE標準規格には含まれていないが、その他の部分はLTE標準規格のまま。9日に披露されたデモンストレーション(気球局を衛星に見立てたシステム)では、0.5秒の遅延を意図的に発生させた状態でビデオコールを行い、遅延はしているものの、コミュニケーションできることが紹介された。