一方、シャープ側には破談に終わった4年前の出資交渉のトラウマがあった。鴻海はシャープへ9.9%出資するとした合意をほごにしたからだ。シャープの株価下落で合意した出資額に見合わなくなったのが理由だが、シャープOBは「鴻海は言いたい放題で、具体的な交渉になるとテーブルにつかないようなことが多かった」と不信の根底を説明する。
さらに、郭会長は5日に大阪のシャープ本社で交渉した後、報道関係者に対し太陽電池事業を切り離す考えを示唆し、雇用も「40歳以下はリストラしない」と語り、条件を微妙に変化させていた。
シャープは今月中旬、法務担当の幹部を台湾に派遣し、「雇用を守る」「一体的な再生を図る」「技術流出を防ぐ」などの具体的な条件を契約書に落とし込む作業に労力を費やした。鴻海が支援額のうち事前に1000億円を保証金として支払い、支援案が実行する“本気度”の担保とした。