新日鉄住金が日新製鋼の子会社化に踏み切る背景には、中国経済の減速がある。日本の鉄鋼メーカーは、欧米や中国の鉄鋼メーカーに比べると、国内市場が堅調な上、企業の体質強化も進んで優位にあるとされるが、国際競争が激しくなる中、合理化を通じて体力をさらに強化できるかが課題になる。(井田通人)
「中国の過剰生産で、鉄鋼業を取り巻く環境が大変悪化している」
新日鉄住金の進藤孝生社長は1日の記者会見で、日新製鋼を子会社化する理由をこう語った。
新日鉄住金は、新日鉄時代の6年前に日新製鋼への出資拡大を検討したが、公正取引委員会の審査が長引き実現しなかった。今回の子会社化は「中国リスク」が顕在化し始めた昨年秋ごろに検討を始めたという。
中国には町工場レベルを含めると約500の鉄鋼メーカーが乱立しているとされ、それぞれ設備を増強してきた。そこに景気減速による需要減が直撃、中国鉄鋼工業協会加盟のメーカーの約4割が赤字とされ、過剰生産能力は世界生産量の約4分の1に達する。
中国メーカーは、国内で売れ残った製品を東南アジアなどに投げ売り同然の価格で輸出。昨年の輸出量は日本国内の生産量を上回る1億1千万トン以上に達し、国際価格の暴落を招いた。
韓国大手ポスコは、2015年12月期に初の最終赤字に転落した。高品質の製品を手がける日本メーカーも輸出採算が悪化している。新日鉄住金は1日、平成28年3月期の連結最終利益見通しを、昨年10月時点の1800億円から1400億円に下方修正した。
進藤社長は「日本と同程度の量が中国から輸出されるようになるとは思わなかった」と6年前との違いを説明し、中国の過剰生産能力解消には「相当の時間がかかる」と語った。