旧村上ファンド系の投資会社と黒田電気の対立は、経営面での提案や要求を行う「物言う株主」が存在感を高めていることを如実に示した。6月に導入された東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)」は上場企業に株主との対話を促しており、“株主重視”の潮流が、物言う株主の追い風となっている。
「利益を100%株主に還元すべきだ」
「黒田電気が中心となり業界再編を進めるべきだ」
6月2日、黒田電気東京本社(東京都品川区)を訪れた村上世彰氏と長女の絢氏ら3人は、金子孝会長らにこう提案した。村上氏父娘は同月5日にも同社を訪れ、細川浩一社長らに同じ主張を繰り返した。
村上氏は平成18年、ニッポン放送の株式をめぐるインサイダー取引事件で逮捕され、表舞台から姿を消した。現在は白髪が増え、ひげを蓄えるなど風貌は大きく変わったが、同席した同社役員によると「興が乗ってくると、昔のように勢いよく持論を展開した」という。
10年ほど前は、村上氏が率いる旧村上ファンドや米投資会社スティール・パートナーズなどが物言う株主として投資先企業の経営陣と対立し、世間の注目を集めた。だが、強引な手法が敬遠されたほか、企業も対応策を強化し、経営陣と株主が極端に対立する事案は、徐々に少なくなった。