しかし、内容物が酒に変わるだけでペットボトル化は格段に難しくなる。ほんのわずかでも、酸素が内部に侵入したり、水分が気化して漏れ出たりするだけで、品質が大幅に劣化してしまうからだ。蒸留酒ではないワインや清酒は特に風味を損ないやすく、酸素などを遮断するバリア性が必要だ。
そこで、三菱樹脂は内側に約20ナノ(1ナノは10億分の1)メートルのごく薄い特殊な炭素膜(バリア層)を形成することで、品質を保持できるようにした。
この炭素膜は、ダイヤモンドと似て規則的な結晶の配列を持つ分、バリア性が高い。一方、ダイヤモンドほど高温・高圧状態でなくても作れる。
ボトル内部を真空状態にした後、原料のアセチレンガスを充満させる。高い電圧をかけるとガスはプラズマ状態となり、内側に膜となって張り付く。
鮫島拓也・包装容器事業部容器グループマネジャーは「ボトルの中で雷を起こすようなもの。それをコントロールしながら製造するのが大変」と難しさを語る。
わずかでもガスが外に漏れれば、そこで“雷”が起きてしまう。内部でも、ガスが均一に行き渡らないと膜の厚さが不ぞろいになるため、細心の注意が必要だ。