なぜか? ひとつはEVの性能だ。1回の充電時間が長く、しかも走行距離が200キロ以内と短い。また、トヨタにとって約2万社ともいわれる取引先企業で形成される「トヨタピラミッド」を維持していくためには、複雑な擦り合わせ技術が求められるFCVのほうが有利という判断が働いているとみられる。
世界初の量産HV「プリウス」を発売以来、エコカー市場を牽引(けんいん)してきたトヨタ。満を持してFCVを発売するだけに、次世代エコカーの流れが決まったようなものと思われるが、ここにきてEVが息を吹き返しつつある。
VWの参入で再び活気づくEV市場
EVの国内販売台数は昨年で約1万5千台とHVのわずか1.5%。普及が遅々として進まなかったEVが関心を集め始めた理由はいくつかある。米国カリフォルニア州の環境規制「ZEV規制」で需要が増加しているほか、大気汚染に苦しむ中国がEVの導入に本腰を入れ始めたことなどがあげられる。
これらを背景に、世界の自動車市場でトヨタとともに「2強」と称されるVWがEV参入を決めたインパクトは小さくない。「技術も資金も、そして人気もあるVWが本腰を入れれば風向きは一気に変わる」(関係者)ためだ。