リクルートホールディングス(HD)が東京証券取引所第1部に16日、新規上場する。今年最大の上場案件というだけでなく、戦後最大級の贈収賄事件とされるリクルート事件や、その後の業績悪化に伴うダイエーへの“身売り”を経て、日本を代表する人材・情報企業に再生を果たしたことも衆目を集める理由となっている。上場でリクルートはどんな拡大戦略を描くのか。(平尾孝)
リクルートの公募・売り出し価格は1株当たり3100円で、上場時の発行済み株式数で計算した時価総額は1兆7794億円となる。4月に上場した西武ホールディングスの約5500億円を上回り今年最大で、平成10年10月上場のNTTドコモ(約8兆8千億円)に次ぐ規模の大型上場になる見込みだ。
「上場によって会社の経営透明性を明確にし、世界に打って出る」。峰岸真澄社長は以前から上場の狙いをこう表明し、着々と準備を進めてきた。
これまでは借入金を活用して国内外でM&A(企業の合併・買収)を図ってきたが、上場で新規に調達する約1千億円を活用し、人材派遣事業の拡大に向けたM&Aや、ITシステム投資などを積極化する見通しだ。
M&Aは、欧州とアジア地域での人材派遣関連がターゲットになるとみられている。また、今後、国内の人材派遣業界は生き残りのため規模拡大が不可欠とされており、「上場して資金を得たリクルートが、国内人材派遣業再編の仕掛け人になる」(大手人材派遣会社首脳)といった見方も出ている。
昭和35年に江副浩正氏が創業したリクルートは、就職情報誌の発行などで成長した。だが、63年に子会社のリクルートコスモス社の未公開株を、政財界の有力者に譲渡したリクルート事件が発覚。当時の竹下登内閣が退陣し、江副氏をはじめとする贈賄側4人と政財官の収賄側8人、計12人がすべて有罪判決を受ける大スキャンダルに発展した。
その後の業績不振から、一時期はダイエーの傘下にも入った。リクルートは独自の再建計画を進め、ピーク時に約1兆4千億円だった有利子負債を自力で完済。平成24年には持ち株会社化して事業のピッチを早め、26年3月期連結決算の売上高は1兆1915億円と過去最高を記録した。
少子高齢化が進む国内事業は今後成長が鈍るのは確実で、これまで作ってきたさまざまなビジネスモデルやサービスを海外展開することが最大の経営課題になる。26年3月期で海外売上高の比率は23%だが、これを中長期的には50%まで高める計画だ。