ただ円高などの影響で00年代以降、世界シェアの6割を中国メーカーが占め、日本勢は1割にとどまる。そうした状況で久保社長がターゲットに据えたのが、シューズ市場の約1割といわれる1万5000円以上の高価格帯の人工皮革だ。“グローバルニッチトップ”を目標に、開発は世界のトップ選手に使われる高機能素材に絞った。
特にナイキや独アディダスとの共同開発にこだわった。「両社の商品発想はダイナミックに変化している。その感性に対応できる技術のベースが帝人にあった」と久保社長は話す。圧倒的な軽さやグリップ力などの高機能性を実現した人工皮革は、欧州のあるトップ選手に「この素材以外のスパイクはもう履けない」と言わしめた。久保社長は「今回のW杯ではトップ選手の7割使用が目標。17年度にはサッカー関連の売上高で1割増を目指す」と強気だ。
だが全体のシェアでは中国に差をつけられ、台湾や韓国勢の技術力も向上。「人工皮革から全く新しい素材に置き換えられるかもしれない」と警戒する。高機能分野でシェアを確保するには、革新的な商品開発力が求められる。(西村利也)