「とっても使いやすいテレビを作りたいと思ってるんだ」。昨年10月に亡くなったアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、次世代テレビの構想を残したといわれている。年内に発売されるとの観測もあり、売り出されれば、世界的な大ヒットは確実だ。
iPhoneやiPadと同様に鴻海が大半の生産を受託する公算が大きい。だが、同社傘下のパネルメーカー、奇美(チーメイ)電子にはアップルが要求する水準をクリアできる技術はない。シャープとの提携は、まさに「渡りに船」だった。
日台米で韓国対抗
一方のシャープにとっては、主力の堺工場の稼働率の改善が最優先の課題となっている。「第10世代」と呼ばれる5畳分の大きさのガラス基板から、大型の液晶パネルを効率的に生産できるのが特徴で、約4千億円の巨額投資で21年に稼働させた。
しかし、地上デジタル放送への完全移行と家電エコポイントの終了で国内の薄型テレビ販売は激減。供給過剰で値崩れも底なしとなり、今年1月から稼働率は50%にとどまっている。
今回の提携では、鴻海の郭台銘董事長が堺工場の運営会社に個人で660億円を出資。同工場で共同生産を行い、鴻海が最大でパネルの半分を引き取ってくれる。さらにアップル・テレビへの供給が実現すれば、稼働率が安定し、業績回復への道が一気に開ける。
「日本と台湾が組めば韓国企業に負けることはない」。鴻海の郭董事長は、背後のアップルを巻き込んだ「日台米連合」によって、世界のテレビ市場を席巻するサムスン電子とLG電子の韓国勢に対抗する野心を隠さない。
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