日本郵便、23年ぶり値上げ それでもコスト増カバーしきれず 再値上げの可能性も

 
引受郵便物数の推移

 日本郵便は1日、はがきを52円から62円に引き上げた。消費税増税以外の値上げは23年ぶり。人手不足による人件費増や需要減少が経営に重くのしかかっている。郵便業務は全国一律の提供を義務付けられた「ユニバーサルサービス」だが、2000億円近いコストを伴うとされる。国際物流部門の立て直しなどの課題が山積し、厳しい経営が続く中、再値上げの可能性も浮上しそうだ。

 「インターネットの普及により、はがきを出す機会がものすごく減った。値上げはしようがない」。1日発売の暑中見舞いはがきを東京中央郵便局(東京都千代田区)に買いに来た千葉県鎌ケ谷市の男性(75)は値上げに理解を示した。値上げによって今年度、300億円の増益要因を見込むものの、コスト増をカバーしきれず、業績は130億円の最終黒字にとどまる見通しだ。

 日本郵便の株式を100%保有する日本郵政の長門正貢社長は「便数が減る中でユニバーサルサービスを維持する必要があり、厳しい状況にある。値上げの効果を食うぐらいコストがかかっている」と理解を求めた。値上げの影響で、年賀状を含む17年度のはがきの取扱枚数は80億9700万枚と16年度に比べて4.9%減る見通しだ。

 今回の値上げは、宅配便最大手のヤマト運輸も人手不足などから値上げを決めたこともあり、日本郵便内でも「理解してもらえるのでは」との雰囲気だ。

 ただ、郵便事業のコストを補う事業の柱を構築できない限りは、将来の再値上げの可能性は高い。今春の日本郵政の取締役会でも「(再値上げなどの)料金体系を変えるチャンスだ」との声が出て、日本郵便幹部も、今回、値上げの対象にならなかった年賀はがきなども含めた抜本的な料金改革に理解を示したが、断念した経緯がある。

 日本郵便関係者は「次は『1年ぶりの値上げだ』というわけにはいかないだろう」と、しばらくは再値上げは難しいとの見方を示す。

 ユニバーサルサービス維持のための再値上げの理解を得られるためには、効率的な郵便事業の構築に加え、国際物流事業や不動産事業など新たな柱の育成も不可欠となりそうだ。(大坪玲央)