東芝、上場維持崖っぷち 株主総会で決算報告見送り
東芝危機経営再建中の東芝に上場廃止の懸念が一段と強まった。同社は31日、6月28日に開く定時株主総会で平成29年3月期決算の報告を見送ると発表した。監査法人の承認を得るための調整が長引いているためで、決算を含む有価証券報告書(有報)を6月末の期限までに関東財務局に提出できない可能性もある。上場を維持するかを判断する東京証券取引所も厳しい見方を強めそうだ。(万福博之)
東芝によると、決算は改めて臨時株主総会を開催して報告する方針。一方、有報は期限までに提出できるよう最善を尽くすとした。有報を6月末に提出できれば、臨時株総は8月末に開く予定だ。
定時株総は、業績見通しや半導体子会社「東芝メモリ」の売却手続きの状況などの説明にとどめる。現在の取締役については暫定的に継続を求め、臨時株総で再び議案を諮る。
今後の焦点は、有報を6月末までに提出できるかどうかだ。有報は金融商品取引法に基づく法定書類で監査意見が欠かせない。
東芝は米原発事業の巨額損失を認識した時期をめぐり、PwCあらた監査法人と意見が対立。その後、PwCあらたの主張を受け入れ、損失認識時期の追加調査に協力している。ただ、「作業には相当な時間が必要」(関係者)で、お墨付きをいつ得られるかの見通しは立っていない。
財務局が認めれば、有報の期限は延期でき、期限までに提出すれば上場は維持される。だが、期限から8営業日以内に提出できなければ上場廃止となる。延期が認められない場合も、1カ月後の7月末までに提出できなければ上場廃止だ。
これとは別に、東芝は不正会計問題で東証から「特設注意市場銘柄」に指定され、上場維持の審査を受けている。内部管理体制の改善が認められなければ上場廃止になる。日本証券業協会の稲野和利会長は31日の会見で「長期に渡り、投資家が有用な判断を行う情報が提供できない状態はゆゆしき問題だ」と述べており、市場が東芝に向ける視線も厳しさを増している。
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