台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下で経営再建を進めるシャープ。想定よりも業績改善は早く進み、平成30年度には連結最終損益が黒字化する見通しだ。しかし安心するのはまだ早い。鴻海は壮大な投資計画を矢継ぎ早に打ち出して成長戦略を加速、経営危機から立ち上がったばかりのシャープに伴走することを求めているからだ。(石川有紀)
巨大マーケット
中国南部の広州市で3月1日、世界最大級の液晶工場の起工式が行われた。出席したのは同市や中国共産党の幹部ら。ホストは鴻海の郭台銘会長だ。
建設予定地に設営したテントに要人を招き入れた郭氏は、新工場で生産を予定する高精細な8Kディスプレーの可能性を上機嫌で語った。
「8Kは医療や科学など巨大なマーケットに活用できる。ここに寿命100年以上のテクノロジーのまちをつくる」
そして、昨年買収したシャープが手がける8Kモニターや自動車用のディスプレーをアピールした。
トランプ米大統領の歯に衣着せぬ発言で米中関係の先行きが不透明になる中、台湾から日米中の各国に積極的に投資する郭氏は注目の的だ。中国や日本から集まった報道機関は計約50社。テント内の撮影が当初は中国の国営放送など一部に限られたため、押し合いになる騒ぎも起きた。