三菱航空機MRJ、頼みは外国技術者 5度目延期「背水の陣」 専門家増員で万全期す
三菱重工業の子会社で、国産ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」を開発する三菱航空機(愛知県豊山町)は27日、外国人技術者を増員する方針を明らかにした。篠原裕一業務執行責任者(CEO)が、フジサンケイビジネスアイなどとのインタビューで明らかにした。同社はMRJの納入を5度にわたって延期している。自前主義にこだわらず、経験豊富な外部の専門家を活用、これ以上の延期がないよう、背水の陣を敷く。
三菱航空機は現在、設計などの開発全般を担う名古屋地区に加えて、米ワシントン州のモーゼスレイクで試験飛行、シアトルでそのデータ解析などを行っている。外国人技術者は名古屋だけで300人弱を雇い入れているが、さらに数十人を増員する。米国の各拠点についても、必要に応じて増やしていく。
MRJをめぐっては、配線などの配置を見直す必要が生じたことから、1月下旬に5度目の納入延期を発表。2018年半ばとしていたANAホールディングスへの初号機引き渡し時期を、20年半ばに2年延ばした。
三菱航空機によると、現時点で今回の延期理由以外に大きな問題は起きていないが、篠原CEOは「要所要所で必要な専門性をもった人材を増やしていく」と説明。これにより人件費はさらに増えるものの、性能や安全性の確保を最優先する構えだ。
ただ、5度目の延期で、それまで3000億円規模と想定していた開発費は、4000億~5000億円程度に膨らむ見通し。投資回収にかかる期間が長期化するなか、これ以上の費用増も避けたいところだ。
一方、今後は設計を変更した上で、安全性を証明する「型式認定」の早期取得を目指す。篠原CEOは設計変更について、「秋までに固めたい」と話し、認定取得の準備を加速する方針を示した。
また、具体的な量産計画には言及しなかったが、「(納入を)2年延期したのでそのぐらいの影響が出る」としており、一時的に生産が止まる可能性があるほか、部品メーカーなどへの影響も懸念される。
■MRJ開発の経緯
2007年10月 三菱重工業が販売開始
08年 3月 全日本空輸から25機受注、事業化を正式決定
4月 三菱重工子会社の三菱航空機が事業開始
12年12月 米スカイウェスト航空から200機受注
13年 8月 3度目の納期遅れを発表
15年11月 愛知県営名古屋空港から初飛行。飛行試験開始
12月 4度目の納期遅れを発表
16年 7月 ロックトン(スウェーデン)から20機受注で基本合意
8月 米国に向かっていた試験機が2日連続で引き返し
9月 試験機が米国に到着
10月 米国での試験飛行開始
11月 三菱重工が社長直轄の事業推進委員会を設置
17年 1月 5度目の納期遅れを発表。初納入は20年半ばに
2月 三菱航空機が社長交代を発表。4月1日付で三菱重工の水谷久和常務が社長に
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