春闘 トヨタ、ベア実施に「理解」 前年水準は難色 最終局面に

 

 大手自動車メーカーの2017年春闘交渉が大詰めを迎えている。各労働組合が求める月額3000円のベースアップ(ベア)に対して、経営側は「経済の好循環」実現など社会性の観点から実施に理解を示す一方、要求水準には難色を示す。15日の集中回答日に向け、ベアの妥結水準をめぐる労使の交渉が最終局面に入った。

 春闘相場の形成に強い影響力を持つトヨタ自動車は8日、愛知県豊田市の本社で3回目の労使協議会を開いた。これまでの2回の協議で、経営側は「既に賃金水準が高い」として、ベアに慎重姿勢を崩さなかったが、今回の協議では、初めて理解を示した。ただ、水準については「現在の経営環境、競争力を考えると(定期昇給に当たる)賃金制度維持分を上回る賃金引き上げ(ベア)は昨年の水準に遠く及ばない」とし、16年春闘の妥結額である月額1500円を大きく下回るとの見通しを示した。豊田章男社長は協議の中で、ベアの水準を念頭に「悩み抜き、決断する」と述べた。

 一方、他の大手自動車メーカーの労使協議では、日産自動車やホンダの経営側がベアに対して一定の理解を示している。ただ、いずれも足元の業績鈍化に加えて、トランプ米大統領の通商政策や英国の欧州連合(EU)離脱など経営環境の不透明さに対する懸念などから、3000円要求は「高過ぎる」と主張。それぞれ妥結額は昨年(日産で3000円、ホンダは1100円)を下回る可能性が高い。

 自動車大手の経営側が今春闘でも最大焦点のベアについて、理解を示したのは「社会性」を踏まえたことが大きい。安倍晋三首相は昨年11月、今春闘を前に経済界に「少なくとも16年並みの水準の賃上げを期待したい」とし、4年連続のベアを要請。自動車業界の大手には、産業規模50兆円を超える基幹産業として、ベアで日本経済に貢献する重要性の認識が前提として強くあった。トヨタの豊田社長も8日の協議で「日本全体が元気になるか、に思いを巡らしている」と述べ、賃上げで経済底上げに貢献する考えを示した。